【元自治体職員直伝】官公庁入札で勝つための戦略:入札公示前からできること

はじめに

官公庁入札は、多くのビジネスにとって非常に魅力的な市場です。安定した取引先として、未払いの心配がなく、継続契約や派生契約の可能性も高いため、多くの企業が参入を目指しています。しかし、新規参入が難しいと感じる方も少なくありません。

本記事では、元自治体職員として数々の入札案件に携わってきた経験を持つ筆者が、官公庁入札で勝つための秘訣を余すところなくお伝えします。

勝負は入札前から始まっている!

官公庁入札の勝敗は、入札公示前から決まっているという話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

確かに、案件によっては既存業者しか実質的に受注できないケースもありますが、多くの案件では、適切な戦略を立てることで、新規参入企業でも十分に勝つチャンスがあります

その鍵となるのが、調達仕様書作成前からの積極的な情報収集と関係構築です。

調達仕様書作成前にできること

調達仕様書は、入札内容を具体的に定めたものであり、落札の可否を大きく左右する重要な書類です。

調達仕様書作成前に積極的に情報収集と官公庁担当者との関係構築を行うことで、以下のメリットを得ることができます。

  • 事前に仕様内容を把握し、自社の強みを活かせるように意見を出すことができる
  • 競合他社の動きを把握し、適切な対策を講じることができる
  • 関係者との良好な関係を築くことで、入札への参加機会を得やすくなる

具体的な方法としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 資料提供招請・市場調査への参加
    • 官公庁は、調達仕様書作成にあたり、専門業者から意見を募るために、資料提供招請や市場調査を実施することがあります。積極的に参加することで、調達内容を事前に把握することができます
  2. 意見招請への参加
    • 官公庁は、一定規模以上の案件の場合、仕様書案に対して、事業者様から意見を求めるために、意見招請を実施します(実施する条件については、官公庁によって異なります)。目的は、公平性を保ち、よりよい仕様とすることです。積極的に参加することで、仕様内容を事前に把握することができます。また、この意見招請への回答を見ることで、競合他社の動向を探ることも可能です。
  3. 既存業者として意見聴取される
    • 更改案件であれば、現行業者に仕様内容について情報収集が行われます。また、新規案件でも、他案件で官公庁と取引している業者に情報収集を行うことができます。この方法は、何らかの形で官公庁からの案件を受注していないとできませんが、貴重な機会を得ることができますので、まずは小さな案件でも参加して、既存業者となっておくことが大切です。

資料提供招請・市場調査への参加

資料提供招請や市場調査に参加するにあたってまず注意することは、とにかく素早く見つけることです。入札自体、公示から札入れまでの期間が短いですが、資料提供招請や市場調査はそれ以上に短期間であることが多く、また、時期が限られていることもあります。日ごろから積極的に情報収集し、機会を見逃さないように気を付けましょう。

実施情報は、官公庁ホームページの入札情報や官公庁発注案件情報ポータルサイトで公表されます。
例:次期税務基幹システム構築に係るRFIの実施について | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)

その他の注意点としては、好感度を上げるコミュニケーションを心がけることです。調達の要件が自社に合わないからといって強引にねじ込もうとしても印象を悪くするだけですので、これらも「営業の場」であることを意識して、より選ばれる、声が掛かりやすい事業者になることを目指すことがその後につながります。

意見招請への参加

調達仕様書案が作成された後には、意見招請と呼ばれる手続きが行われます。これは、事業者から仕様書案に対して意見を募集することで、より良い仕様書を作成することを目的としたものです。

こちらの実施情報も、官公庁ホームページの入札情報や官公庁発注案件情報ポータルサイトで公表されます。
例:情報システム 政府調達対象 意見招請|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

意見招請は、自社の強みをアピールし、仕様書に反映してもらう絶好の機会です。
意見招請に際しては、以下の点に注意しましょう。

  • 建設的な意見を丁寧な文章で提出する
  • 回答が思い通りでなくても、攻撃的にならない
  • 他社の意見と、それに対する回答も必ず確認する

官公庁の担当者も、良い意見を丁寧な文章で送ってきてくれた人には、好印象を持ちます。意見や質問を送った事業者名は公表されませんが、担当者には当然わかっています。好印象を持たれれば、声が掛かる機会を増やせますので、良好なコミュニケーションに気を配って損はありません。

ごくまれに、回答に対してクレームを入れてくる事業者様がありましたが、それをやっても何も良いことはありません。クレームを入れても回答は変わりませんし、悪印象を持たれるだけです。

送られた意見や質問とそれに対する回答は、全て公表されますので、自社以外からのものも見ることができます。内容を注意深く読むことで、競合他社の動向も推測することができます

もしも自社が意見招請に間に合わなかったとしても、回答からは多くの情報を得ることができます。発注者の考え方だけでなく、競合他社の考え方や数もわかることがありますので、回答は必ず確認しておきましょう。

官公庁入札は、入札前から積極的に情報収集と関係構築を行い、戦略的に準備することで、勝率を大幅に向上させることができます。
本記事で紹介したノウハウを参考に、ぜひ官公庁入札にチャレンジしてみてください!

その他、役立つ情報

このブログ記事が、官公庁入札で成功を目指す皆様にとって少しでも役立つ情報となれば幸いです。

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総合評価落札方式や企画競争に挑むなら、知っているべき「基本のキ」。

それなのに、応札者の多くが知らない、提案書の勘所について、元自治体の調達担当者が「中の人」の視点でお伝えします。
今日からすぐに実践できる簡単改善策も盛りだくさんですので、入札に挑まれている方は、必聴必見です。

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投稿者プロフィール

若林凜
若林凜
神奈川県内の地方自治体で
・総務(文書管理、議会対応)
・システム運用(教育、福祉、医療)
・会計(出納、資金管理、下水道企業会計)
・監査(社会福祉法人)
・小規模企業支援、労働行政、起業支援
に携わった後、2020年に業務改善系ITコンサルタントとして起業(神奈川県小規模企業支援強化事業コーディネーター)
現在、株式会社TheFlow代表取締役

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